がん細胞は発酵によってエネルギーを獲得する

2019/03/12

がんを撃退しようと、多くの科学者が日夜挑戦を続けてきましたが、成功していません。ここで、基本に立ち返り、がん細胞と正常細胞の違いについて考えてみましょう。

がん細胞は正常細胞にくらべ、ブドウ糖の消費量が格段に高くなっています。この重要な事実は、1920年代にドイツのオットー・ワーブルグ博士によって発見されました。1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞したワーブルグは、細胞の呼吸系が故障するとき、正常細胞ががん細胞に変身すると結論づけました。
 
彼は、がん発生の根源はエネルギーのつくり方にあると主張します。がん細胞は酸素なしでエネルギーをつくり、ブドウ糖の消費を増やし、発酵を促進し、乳酸をつくります。乳酸の蓄積は正常細胞にとって好ましくないのですが、がん細胞の発育には好環境になるのです。

すべての細胞は生きるのにエネルギーを必要とします。このエネルギーは、細胞がブドウ糖を酸素を使って燃やして獲得したものです。酸素を使い栄養素からエネルギーを獲得することを好気性代謝といいます。私たちヒトが呼吸するのは、酸素を取りこみ、細胞に提供するためなのです。


出典:「がん治療の最前線」生田哲 SBサイエンス・アイ新書

でも、酸素が足りない、酸素が使えない、酸素を使った代謝がうまくいかないといったケースでは、細胞はがん細胞に変身する傾向にあります。
 
細胞は酸素が使えなくなると、酸素を使わない(これを嫌気性といいます)発酵という代謝にスイッチを切り替えて、エネルギーを獲得します。発酵によって細胞は生きることはできるのですが、エネルギーをつくる効率が著しく低下します。
 
このような原始的で非効率的な発酵という代謝は、がん細胞のような分化していない細胞によく見られます。発酵で最終的にできてくるのは、二酸化炭素ではなく、乳酸です。乳酸によって細胞をとりまく環境が酸性になり、悪化することで、この非効率的な発酵という代謝が固定されるのです。
 
このとき、細胞は胚に似てくるのです。このプロセスは、複雑で特化された細胞が単純で原始的なものに逆戻りするもので、「脱分化」といいます。脱分化した細胞は、制限なく、死ぬこともなく、どんどん増殖するようになります。がん細胞の誕生です。がん細胞は、効率の悪い発酵によってエネルギーを獲得しているのです。




 

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