アスピリンががんの予防薬になりえない理由 

2019/01/16

炎症を抑えれば、すべてのがんとは言えないまでも、かなりのがんを防ぐことができるでしょう。医学の分野で権威ある『実験医学雑誌』の編集者は、2001年3月号で、以下のように述べています。

「炎症が起こることで、ヒトの肺、肝臓、大腸、膀胱、前立腺、胃粘膜、卵巣、皮膚にがんが発生しやすくなる。これまでの多くの研究から、アスピリンなどの抗炎症薬を服用することで、大腸がんのリスクを40~50パーセント下げ、肺、食道、胃に発生するがんを予防できる可能性が高い」 


出典:「がん治療の最前線」生田哲 SBサイエンス・アイ新書

いくつもの研究から、アスピリン、イブプロフェン、アドビルなどの抗炎症薬を毎日飲んでいる人は、飲んでいない人にくらべ、ポリープと呼ばれる前がん状態になりにくいことが確認されています。
 
炎症を引き起こす炎症性物質をつくるのは、コックス2(シクロキシゲナーゼ2)という酵素です。アスピリンに代表される抗炎症薬は、コックス2の働きを阻害し、炎症性物質の生産をさまたげ、がんの発生を抑えるのです。

 
それなら、安価なアスピリンを飲むだけでがん予防ができる、と思うでしょう。アスピリンは安価な薬ですが、残念ながら、安全な薬ではありません。確かにアスピリンは胃粘膜から出血を起こすという深刻な副作用をしばしば発生させるため、がん予防薬として実用化できません。 

 
それなら、胃粘膜を荒らさないアスピリンをつくればいい、というアイデアがでました。そしてビオックスやセレブレックスなどの新しい抗炎症薬が続々と登場しました。製薬業界だけでなく『タイム』誌などでも「スーパーアスピリン」の誕生などと、大騒ぎしていたことは懐かしい。

 
研究段階では、これらの薬は、がんをもののみごとに抑制しました。しかし、たいへん困ったことが発見されたのです。2004年、これらの薬は、アスピリンやイブプロフェンなど一般的な抗炎症薬を飲んだ場合にくらべ、心臓発作を4倍も発生させることがわかり、スーパーアスピリンへの期待は一気にしぼんでしまったのです。

 

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